これまで、力の流れ、部材配置、柱や梁の形について見てきました。
今回は、建物を構成する材料そのものの特徴を整理します。
一級建築士学科試験では、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造について多くの知識が問われます。
ただ、それぞれを完全に別の暗記項目として扱うより、
- 何が得意なのか
- どんな壊れ方に注意するのか
- 弱点をどう補っているのか
という共通の視点で見ると整理しやすくなります。
どの構造が一番強い、という話ではない
木造・鉄骨造・RC造には、それぞれ得意なことと苦手なことがあります。
建物の安全性は材料名だけでは決まりません。
- 部材の大きさ
- 柱や壁の配置
- 接合部
- 建物の形
- 力の流れ
- 施工状態
などが組み合わさって性能が決まります。
見るべきなのは、材料の性質に合った使い方がされているかです。
木造|方向と接合部を見る
木材は、繊維の方向によって性質が変わります。
繊維に沿って力を受ける場合と、繊維を横切る方向に力を受ける場合では、強さや変形の仕方が同じではありません。

木造の問題では、「木材は強いか弱いか」ではなく、どの方向に力がかかっているかを確認します。
木造では「つながり方」も重要
柱・梁・筋かいなどの部材が強くても、接合部で力を受け渡せなければ建物全体として働きません。
地震時には、柱脚部や筋かい端部などに引抜きやずれが生じます。

部材単体ではなく、
床・屋根 → 耐力壁 → 柱・土台 → 基礎
という力の流れを意識してください。
また、木材は水分・腐朽・シロアリの影響も受けるため、耐久性を保つための防水・換気・防腐等も構造性能と無関係ではありません。
鉄骨造|材料が強くても「細長さ」に注意
鋼材は大きな力に耐えやすく、比較的小さな断面でも部材をつくれます。
ただし、圧縮を受ける部材が細長くなると、材料そのものが壊れる前に横へ曲がる座屈が問題になります。

鉄骨造では、
- 部材の細長さ
- 板要素の薄さ
- 横方向の支え
- 接合部
を見る必要があります。
横補剛などで変形できる長さを短くすれば、座屈を抑えやすくなります。
また、ボルトや溶接は単に固定するためではなく、柱と梁の間で力を受け渡す重要な部分です。
鋼材は火災時に温度が上がると性能が低下し、腐食すれば有効断面も小さくなります。
「鉄だから強い」で終わらせないことが大切です。
RC造|コンクリートと鉄筋の役割分担
鉄筋コンクリート造では、コンクリートと鉄筋を組み合わせます。
基本的な特徴は、
- コンクリート:圧縮に強く、引張りに弱い
- 鉄筋:引張りを負担できる
という役割分担です。
梁が曲げを受けると、圧縮される側と引っ張られる側ができます。

RC造では、コンクリートと鉄筋が一体として働くための付着・定着も重要です。
さらに、
- かぶり厚さ
- 主筋
- せん断補強筋
- 帯筋・あばら筋
なども、「何の弱点を補うためのものか」と考えると整理しやすくなります。
3つの構造を並べてみる

| 構造 | 得意・特徴 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 木造 | 軽い、加工しやすい | 方向性、接合部、水分・腐朽 |
| 鉄骨造 | 大きな力に耐えやすい | 座屈、接合、火災時の温度上昇、腐食 |
| RC造 | 圧縮と引張りを材料分担できる | ひび割れ、付着・定着、せん断、かぶり |
覚える項目は違いますが、考え方は共通しています。
得意な力を負担させ、苦手な部分を別の部材や方法で補い、接合部を通して力を流す。
過去問では、この視点から「なぜその規定や補強が必要なのか」を考えてみてください。