一級建築士の学科試験は、過去問を中心に勉強した場合、実際の本試験でどこまで対応できるのでしょうか。
この疑問を確かめるため、2011〜2025年の過去問15年分で学んだ知識を使い、令和8年(2026年)の学科試験125問をどこまで解けるか、5科目すべてを検証しました。各科目の問題を1問ずつ確認した動画も公開しています。
検証結果は96/125点。令和8年の合格基準を満たした
| 科目 | 検証得点 | 得点率 | 令和8年の科目別合格基準点 |
|---|---|---|---|
| 学科Ⅰ 計画 | 11/20点 | 55.0% | 11点 |
| 学科Ⅱ 環境・設備 | 17/20点 | 85.0% | 11点 |
| 学科Ⅲ 法規 | 25/30点 | 83.3% | 16点 |
| 学科Ⅳ 構造 | 27/30点 | 90.0% | 16点 |
| 学科Ⅴ 施工 | 16/25点 | 64.0% | 13点 |
| 合計 | 96/125点 | 76.8% | 94点 |
※法規25点・合計96点には、法規No.29の全員加点1点を含みます。過去問の知識から正答可能と判定したのは95問です。
令和8年の公式合格基準は、総得点94点に加え、各科目の基準点をすべて満たすことです。今回の検証では、総得点が基準を2点上回り、5科目の基準点も満たす結果となりました。
ただし、計画は基準点と同じ11点です。総得点にも大きな余裕があったわけではありません。
96点の内訳には注意が必要です。
- 95問:過去問15年分の知識から正答まで到達できると判定した問題
- 1問:法規No.29の正答肢なしによる全員加点
- 29問:過去問の知識だけでは正答を確定する根拠が不足すると判定した問題
つまり、過去問から正答可能と判断した95問+全員加点1問=96点です。「過去問だけで96問正答できた」という意味ではありません。
公式資料:令和8年一級建築士試験「学科の試験」の合格基準点等について(建築技術教育普及センター)
どのような方法で判定したのか
今回の目的は、過去問と似た問題を数えることではありません。過去問で学んだ知識を使って、令和8年の正答まで判断できるかを基準にしました。
過去問に同じ論点が出ていても、令和8年で問われた具体的な条件や数値まで判断できなければ、取れない問題としています。そのため、出題内容が似ているだけで安易に得点へ加えていません。
なお、法規については本試験と同様に法令集を使用する前提です。過去問学習によって調べる条文や確認の仕方が分かり、法令集を使って正答に到達できる場合も得点に含めました。
取れなかった29問から分かったこと
取れなかった問題には、大きく三つの特徴がありました。
1. 正答に必要な知識が過去問から得られなかった
例えば、計画では薬師寺東塔の構成、施工では線入り板ガラスの防火性能など、今回の正答を判断するための決め手が過去問15年分からは不足していると判定しました。
2. 類似問題はあっても、問われた条件が違った
例えば、施工の現場発泡断熱材では「1層の吹付け厚さ」の知識は過去問にありましたが、令和8年で問われた「1日の総吹付け厚さ」の判断には届きませんでした。
関連知識を知っていることと、その問題を正答できることは別です。
3. 法改正で判断基準が変わっていた
施工の施工体制台帳では、建築一式工事の基準額が改正前の7,000万円から8,000万円に変更されました。過去問の出題当時の数値を覚えているだけでは、令和8年の問題を正しく判断できません。
過去問クイックでは、法改正に対応した過去問解説を提供しています。 この検証で設定した「過去問出題当時の知識だけで判断できるか」という条件と、現在の法令に対応させた教材の解説は区別しています。
※三つの特徴は代表例による整理です。29問を厳密に分類して件数を集計したものではありません。
検証動画|全6本
各科目の動画では、令和8年の問題を問1から順番に確認し、対応する過去問と、その知識で正答できるかどうかを解説しています。全体像を先に知りたい方は総括編から、個別の根拠を詳しく確認したい方は各科目編からご覧ください。
まずは総括編
125問の検証結果、96点の内訳、合格基準との比較、取れなかった29問の特徴を約6分で整理しています。
各科目の検証
第1回|学科Ⅰ 計画編:全20問を検証 建築史や施設計画など、過去問で判断できる問題とできない問題を確認します。
第2回|学科Ⅱ 環境・設備編:全20問を検証 過去問で扱われた原理・設備知識が、異なる条件の出題に通用するかを検証します。
第3回|学科Ⅲ 法規編:全30問を検証 法令集を使って正答へ到達できるかを含めて判定。No.29の全員加点も区別しています。
第4回|学科Ⅳ 構造編:全30問を検証 構造計算6問と文章問題24問について、過去問の解法や知識が使えるかを確認します。
第5回|学科Ⅴ 施工編:全25問を検証 同じ施工方法や数値が再出題された問題と、条件・法改正により判断が難しい問題を確認します。
過去問は「答えを覚えるため」だけの教材ではない
今回の検証で改めて感じたのは、過去問の正答肢を覚えることと、過去問で学んだ知識を使えることは違うという点です。
過去問で正誤の理由を理解し、知識を整理しておけば、初めて見る記述でも判断できることがあります。もちろん、過去問にない知識や法改正など、別途対応が必要な部分もあります。
ただ、学習範囲を際限なく広げる前に、まず過去問の内容を確実に理解して使えるようにする。その価値を考えるうえで、今回の検証は一つの材料になったと思います。
注意: これは令和8年の試験問題を事後的に照合した検証です。試験当日の時間制約やケアレスミスなどは再現しておらず、ほかの年度でも必ず同じ得点が取れることを示すものではありません。令和8年は、公式発表でも総じて難度が低かった年度とされています。
では、過去問を実際にどう勉強し、その知識を試験で使えるようにするのか。次は学習方法を考えていきたいと思います。
過去問クイックでは、一級建築士学科試験の過去問演習を無料で利用できます。今回の検証で興味を持った方は、まず問題を解くところから始めてみてください。