令和8年一級建築士「設計製図の試験」の課題は「ホテル」です。

課題発表時の留意事項には、敷地周辺だけでなく、既存建築物の現状保存に配慮するという条件が示されています。

この記事では、

  • 平成17年に出題された既存部のある課題
  • 平成17年の「活用」と令和8年の「現状保存」の違い
  • 既存建築物を残しながら新築を加えた実例

から考え方を整理します。

この記事は課題発表時点の考察です。具体的な保存範囲・利用方法・接続条件は、本試験の問題文で確認する必要があります。

平成17年はどのような課題だったのか

平成17年の課題は、既存部を含む「防災学習のできるコミュニティ施設」でした。

既存部の主要構造部を残しながら、新設部と一体の施設として計画することが求められていました。

平成17年課題の敷地条件イメージ
平成17年課題の敷地条件イメージ

既存部分は単に残しておく対象ではなく、新しい施設の一部として組み込む対象でした。

平成17年課題の1階平面イメージ
平成17年課題の1階平面イメージ

ここで重要なのは、既存部を無視して新築部分だけを成立させる課題ではなかったことです。

平成17年の「既存部活用」と令和8年の「現状保存」

令和8年の課題発表では、「既存建築物の現状保存に配慮」という表現が使われています。

平成17年と比較すると、既存建築物をどこまで変更できるかについて、より慎重に読む必要がありそうです。

平成17年の既存部活用と令和8年の現状保存の違い
平成17年の既存部活用と令和8年の現状保存の違い

ただし、現状保存だからといって、

  • 既存建築物を利用しない
  • 新築ホテルとは一切接続しない

と決めつけることはできません。

本試験では、

  • 外観のみ保存するのか
  • 内部の室構成も保存するのか
  • 既存用途を継続するのか
  • ホテルの一部として利用するのか
  • 新築部分と接続するのか
  • 庭園や外構も保存対象なのか

を問題文から読み取る必要があります。

実例1|パーク ハイアット 京都+京大和

歴史的な建築群や庭園を優先し、新築ホテル側の高さ・配置・ボリュームを調整した事例です。

試験への読み替えとして参考になるのは、既存側を変えるのではなく、新築側で必要面積の確保方法を工夫するという考え方です。

例えば、

  • 高さを抑える
  • 建物を分節する
  • 地下を利用する
  • 既存建築物や庭園への圧迫感を抑える

といった方向です。

実例2|新風館・エースホテル京都

既存棟と新築棟の間に通りや外部空間を挟むことで、新旧の建築物をそれぞれ見せながら、施設全体としてつなげています。

参考になるのは、新旧を密着させなくても関係はつくれるという点です。

中庭、通路、テラス、広場などの緩衝空間を使う考え方があります。

実例3|ユダヤ博物館ベルリン

旧館と新館は地上では独立して見えますが、利用動線は地下でつながっています。

ここからは、

外観上は分離し、必要な接続だけを限定的に行う

という考え方を読み取れます。

試験で地下接続が必要という意味ではありません。接続方法の選択肢を広げるための参考事例です。

実例4|モルガン・ライブラリー&ミュージアム

複数の歴史的建築物を残し、その間に新しいパビリオンを加えています。

新築を一つの大きなボリュームにせず、既存建築物のスケールに合わせて分節している点が特徴です。

不足する面積の一部を地下へ収めることで、地上部分の圧迫感も抑えています。

4つの実例に共通すること

既存建築物を残すときの新築側の調整方法
既存建築物を残すときの新築側の調整方法

共通しているのは、既存建築物を新築計画に合わせて大きく変えるのではなく、既存建築物を計画条件として新築側を調整していることです。

考えられる調整方法には、

  • 既存建築物から離す
  • 中庭や通路を挟む
  • 高さを抑える
  • 建物を分節する
  • 地下を利用する
  • 接続箇所を限定する
  • 必要機能を新築側へ集める
  • 既存建築物への視線やアプローチを残す

などがあります。

本試験では「保存条件」を最初に読む

令和8年課題では、現時点で一つの解答パターンに決めつける必要はありません。

本試験でまず確認すべきなのは、

  • 何を保存するのか
  • どこまで変更できるのか
  • 既存建築物を利用するのか
  • 新築ホテルと接続する必要があるのか
  • 建築物以外の保存対象があるのか

です。

既存建築物を簡単には動かせない計画条件として受け入れ、そのうえで新築ホテルをどう成立させるか。

その視点で問題文を読む準備をしておきましょう。